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入学式は盛況だった。
保護者は来るものではないようで参列していないが、自由参加にも関わらず、新しい下級生を見ようと上級生が多数列席している。
学園長の歓迎の挨拶、新入生代表の言葉、生徒会長の祝辞。
まあ入学式らしい演目が次々と流れていく様を、新入生席で適当に流す。
俺はどちらかと言えば話してる内容云々より、人間観察に忙しかった。
視線ではなく感覚での観察だから、特に目立つこともない。
例えば、学園長。
見た目は長い白髭の好々爺だったが、纏う「魔力」と広大な学園を覆う防御魔法の質が同じだった。
流石と言おうかただの爺さんではなく、なかなかの実力者らしい。
あとは生徒会長もなかなか面白そうに見えた。
新入生代表は、「その他大勢」よりはマシだが、まだまだ気になる程の気配ではない。
新入生たちは俺のように適当に話を流している者、寝ている者、真剣に聞いている者と様々で、正直多くてまだ見切れてない。
後ろに広がる上級生に至っては、観察はまたの機会になりそうだ。
ただ、1人。
個々に観察する前に、会場に集ったその時点で、「面白い」と断定した奴が居る。
位置的には、俺の座る席から2つ先の列の、5つ左。
多分あれは、ただの学生じゃない。
封印だかなんだか知らないが強固に隠してはいるが、恐らく闇属性なんだろう。
だからわかる。
「闇」の領域に掛かるモノなら、俺にわからないわけがない。
同じクラスになれば面白いのにと、漠然と思った。
クラス発表は式の最後らしいからまだ少し掛かりそうだが、それはそれで観察時間が増えるので構わない。
学園生活の注意事項をBGMに、俺は人間観察の続きに勤しんだ。
「―――…では、これよりクラス発表に移ります」
そう司会の先生の声が響いたのは、俺の人間観察も新入生が終わりに近づいた頃。
読み上げでもするんだろうかと適当に想像していた俺は、構わず人間観察を続けていた。
しかしいい意味で、俺の予想は裏切られる。
「クラス発表」なんていう雑用に思える演目に、最初の挨拶の後は黙って式を見守っていた学園長が再び壇上に上がり、手のひらに魔力を集め始めたのだ。
人間観察を中止して、少しだけ目を細める。
入学までの1週間で貯えた知識により、この波動は多分「無属性」だろうと判断。
そして俺がそう判断した次の瞬間、学園長の手のひらから魔力が弾けた。
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