そこから、始めてみる。

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚  魂を抜かれたようになってしまった男をそのままに、蓮見流華は俺の前を歩いていく。  手を引かれてカフェを出たけれど、俺にはロードレーサーという立派な連れが待っていた。  やんわりと手を解いて無言でそれを訴えると、蓮見流華は俺を一瞥して──何事もなかったかのように、歩き出した。  教育実習生と、教え子の再会って。  普通、こう、もっとさわやかな言葉と表情で挨拶を交わしたりするもんじゃないのかな。  それとも俺がまだ世間知らずで、こういうパターンも結構あるとか……?  いやいや、そんなはずはないだろう。  そのまま蓮見流華を見送ってもよかったのかも知れないけど。  何故だか俺は、そのまま彼女の後を追いかけた。  思い当たるほどの理由なんてない。  それでも、何か理由みたいなものがあるのだとしたら。  去年出会った清楚な蓮見流華と、目の前のいかにもプロの女な蓮見流華と──そのふたつの顔に好奇心が湧いてきてしまったからじゃないかと思う。  まあ、どっちだっていいんだけど。 .
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