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昼休み、いきなり顔を両手で挟まれて、今見ていた方の反対側を向かされる。
首筋でごきり、と音がして、鈍い痛みが広がった。
「坂田くん、はい、あーん」
視界いっぱいに映るのは、最近やたら絡んでくるクラスの女子だった。
見ると、目の前に極細ポッキーが差し出されていた。何やら上機嫌な彼女は、俺の顎に手を添える。
こんなことは、しょっちゅうだ。
内心やれやれと思いながら、差し出されたポッキーを見つめながらくわえてやった。
「きゃー、坂田くんってやっぱり、Mー!」
何やらきゃあきゃあと騒ぎ出した女子を見て、俺は眉根を寄せる。
「何? Mって」
「あのね、今日出た雑誌に書いてあったの。顎を触られて、ぱっと離れたらS、そのままじっとしてたらMなんだって」
「はあ、そう……」
彼女達の妙なテンションについていけなくて、俺は渇いた笑いを漏らした。
正直、SだのMだの、そんなことでテンションの上がるクラスの女子だの、どうでもいい。
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