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「仁志くん?」
「変なことしないって約束してくれるんなら、抱きしめるくらいはできますけど」
俺は『生意気だ』と笑い飛ばされるつもりで、そう言ったんだけど。
その瞬間、流華さんの顔が、泣きそうに歪んだ。
流華さんはそのまま躊躇いなく俺の腕の中に飛び込んできた。
俺は少し戸惑いながら、その細い肩を抱きしめることにした。
年上の女の人は、いつも突然こうして弱くなるから、可愛いものだ。
けど、その女の人は俺のものにはなってくれない。
だから、はなから俺のものではない流華さんを理由も判らず慰めることは、ちっとも苦にならなかった。
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