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それにしても。
こういうひとの、報われない恋の相手……というのは、一体どんな男なのだろう。
決して本物ではない笑みを毎晩違う男性に見せる彼女の生業に対して、偏見らしい偏見は持ってないし、何とも思わないけれど。
こうして、ほぼ行きずりの俺みたいな高校生に甘えたくなる程弱くなってしまう恋なら、やめてしまえばいいものを。
──と、頭ではそう思うんだけど。
それを口に出してしまえる程、世間知らずの子どもではないつもりだった。
恋をしている人間に対して、恋を否定してしまうこと程野暮なことはない。
恋というのが、自分じゃ一番どうにもならないものだってことくらいは、実感しているつもりだ。
だって、こうして腕の中に流華さんを抱きしめながら、このひとが愛美さんだったら……なんて勝手なことを、俺も考えているんだから。
……これは立派な未練だな、うん。
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