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桜の木の葉っぱが陽の光を反射しながら瑞々しい輝きを放って、俺は目を細めながらロードレーサーを走らせる。
もう夕方近くになるというのにまだ明るい陽射しが、初夏の訪れを予告していた。
つい先日教室の階数がひとつ上がったところなのに、もう中間テストのことを考えなければいけない時期だと気付いて、何だか急に憂鬱になった。
「……かったるい、な……」
ほとんど口の中だけでそうぼやいて、涼しい風が吹き抜けたところで、ロードレーサーから降りる。
見る度高くなっていく空は、春の気配などもう残してはいない。
たかが高校生がここで物思いに耽ったところで、季節が留まるわけもないんだけど。
ロードレーサーは、押して進むのにはあまり向いていない。けれど何だか少しだけ歩きたい気分で、俺はハンドルを持って進んだ。
いつもは早く駆け抜けてしまうから気付かなかったけど、この通りはいい雰囲気のカフェがあったりしたんだな、なんて思いながら歩く。
高校生の自分には少し敷居が高いようなお店だけど。
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