第23回『白猫』

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朝。もう外は明るいようだ。 だけどボクは、布団から脱け出せない。ここ最近ずっと寒いんだもん、動きたくない。 昨日の夜もかなり冷え込んでいたようだから、もしかするとまた雪が積もっているかもしれない。ぶるり。体が勝手に武者震いした。 くぐもった時計の秒針が大きく聞こえてくる。布団の隙間からそれを見ると、彼女が起こしに来るまでにはちょっとの余裕があった。 時間にして、およそ30分弱。 やった、まだ寝られる! 鼻先に冷たい空気が漂ってきて、さっさと布団を被り直す。 体温で暖められた布団の中は、言うまでもなくとっても暖かい。どんどんと、まぶたが降りていく。 と、そこで重大な問題に気がついた。 朝といえば、だ。そうだよ、そうだった。朝ごはんまだだよ。 お腹の中が空っぽであることを、思い出したんだ。 こうなるともう寝てなんかいられない。目がびんびんに冴えちゃった。 今日のごはん、なんだろうな。ママ、どんなの作ってるのかな。 ママが買ったって言ってた…なんだっけ?はらまき?ああ、そうそう。あのはらまきじゃけスッゴクおいしかったなぁ。 ああ、お魚食べたいよぅ。 早く、起こしに来ないかなぁ。 だったら自分で起きればいい?ふっふっふ、ボクには、自分で起きるという選択肢はないのだっ!だってどうしても寒いんだもん!! すすすっ ボクの部屋は引き戸。この音が聞こえるということは、彼女が来たというサイン。 待ってました!! 再び布団の隙間から、様子を伺う。 ゆっくりとボクのところまで近づいてきている。 そして彼女はボクの布団に侵入し、お決まりの挨拶を交わす。 にゃぁん 「えへへ、おはよぉ」 鼻をすりよせると、彼女は嬉しそうにボクの鼻先をなめた。 彼女を抱きよせて、ようやくボクは布団からはい出した。 彼女は雪が好きなのかな。黒い毛並みのはずなのに、それがわからなくなるほど真っ白な雪にまみれていた。 ちょっと、いやかなり冷たい。ごはんの前に、まずは拭いてあげよう。 こうして今日も、ボクの1日が始まる。
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