『フェアリーテェル』

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“相棒、俺は戦う理由を見つけた” あいつは突然、俺にそう告げた。 そして…皆の制止を振り切り、あいつは何処かへ消えた。 “待て、ピクシー! 戻れ!戻れよっっ!!” 思わず後を追おうとする俺に、ミサイルアラートの耳障りな音が鳴り響いた。 ピクシー。 通称“片羽の妖精” あいつと出会ったのは、俺がウスティオ臨時政府の外国人傭兵航空部隊に入隊してすぐだった。 “よぅ。あんたがサイファーか” ニヤリと浮かべた笑みと、俺を値踏みするような視線が、あいつの自信のほどを語っていた。 あいつは初戦以降俺を気に入ったらしく、やたらと話しかけ、“相棒”と呼んでくるようになった。 小っ恥ずかしかったが、反応してやるのも癪で聞き流していた。 だけど、いつ頃からだろうか。 あいつに“相棒”と呼ばれる度に感情が高揚するようになったのは。 格好つけて言うと、俺は力と金に生きていた。 強き力と金があればいい。 その他は生きるのに邪魔だとさえ思った。 だから、戦争に感情移入する奴…とりわけ理想を持ち込む奴を馬鹿にしていた。 もちろん、仲間というものも。 結局、馬鹿は俺だった。 ドライを気取り、他人を見下しながら、俺はいつの間にかあいつにほだされていたんだ。 あいつと一緒に飛ばないと、戦いの中に満足感を得られなくなっていた。 あいつを失ってしばらくは分からなかったが、今なら分かる。 力を求める俺が、あいつに惹かれないわけなかったんだ。 今になって、あいつは戦う中で何を思い、何を考えていたのかと考えてみる。 いったい何が、あいつを変えたんだろうと。 でも、長らく他人の思考に興味なかった俺が分かるはずもなかった。 ただ、もう一つだけ分かったことがある。 あいつが居ない空はやたらと広い。 なぁ、ピクシー…あの日お前は何処へ飛んで行ってしまったんだ? ここまで書いてふと、我に返る。新しいガルム2…PJに勧められて、心の赴くまま書いてみたが…。 なんて女々しいことか。 見たくもなかった己の一面を目の当たりにして、思わず顔をしかめる。 こんなものくだらない。 沸き上がった不快感と共に、紙束をビリビリに引き裂く。 それを開けっ放しの窓から吹き込んだ風が、さらっていった。 宙に舞う紙片が、まるで妖精が振りまく魔法の粉のように見えた。
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