『ジョーカー・ゲーム~エピソードZERO~』

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「ねぇ、僕の飼い主になってくれる?」 ソレが、三好が年上で金持ちの女を落とす時の常套句だった。 決まった宿を持たぬ野良猫は、切れすぎる頭と才能を持て余し、退屈な日々を過ごしていた。 「……ふぁ。」 「ん…もう行っちゃうの?」 「うん、ごめんね。 講義が1限からなんだ。」 「そう…。今夜も旦那帰って来ないの。 来てくれるわよね?」 「…さぁね。期待しないで。 じゃ。」 この女“とも”もう終わりだ。 執着心が出てきた女は面倒臭い。 小鳥が鳴く朝、野良猫は飼い主に貢がれた高価な衣服を身につけ、大学に出かけて行った。 三好のこれまでの人生は一言で言うと、不幸なものだった。 赤ん坊の頃から孤児院に居て、誕生日も名前も分からない赤ん坊だった。 父は高級官僚、母は京の芸者。 要するに妾の子だ。 父は三好が出来たと知った瞬間逃げ、捨てられた母は三好を捨てた。 この事実を、孤児院の人は誰も三好に知らせなかった。 全て三好が孤児院を出ていった後調べたことだ。 別に両親に会いたかった訳でも、恨んでいた訳でもない。 ただ、知りたかっただけだ。 それだけ。 人と群れるのが嫌いな三好は、13歳でさっさと孤児院を出ていった。 生きる為に、彼はかわいい野良猫のフリをした。 そして、とっかえひっかえ宿を変えた。 そんな生活を送りながらも、三好は自分の学費だけは女に頼らなかった。 全て特待生。 今通っている大学もだ。 超がつくほど有名で難関校に通っていても、三好の心は相変わらず空虚なままだった。 “友人”なら沢山居た。 ただし、それは周りから見た場合でしかない。 三好は友人という言葉を知ってはいたが、決して理解は出来ない。 彼にとっては、人間は利用価値があるか無いかしか興味ないからだ。
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