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「…あの…。」
笹森が、ぽつりと言った。
次の言葉がなかなか出て来なかったが、俺達は辛抱強く待った。
笹森が心配そうに俺の顔を見る。
俺が頷くと、笹森は今日子先生に目を向けた。
「…どうして、カウンセラーになろうと思ったんですか?」
唐突に思える彼女の質問にも、今日子先生は動揺を見せず、優しく微笑んだ。
「…誰にも、内緒にしてくれる?」
笹森は、少し驚いてから、真剣な顔をして頷いた。
俺も初めて聞く話だったので、…今日子先生の改まった口調に少し緊張して、姿勢を正した。
先生は、一口コーヒーを飲んで、カップを机に置いた。
「…わたしね。…昔、…男性から、乱暴されたことがあるの。」
握った笹森の手に、力が入った。
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