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空気を変えるように、先生は大きく息を吐き、にっこりと笑った。
「これでも、頭は良かったから、そこから猛勉強したのよ。
けっこういい大学に入って、大学院まで行って、…臨床心理士の資格を取った。
…でも、その部分は、わたしにとって、たいして重要じゃないかな。
大学院にいた頃、ボランテイアで児童養護施設の子供たちの話を聞いてた時期があって。
そこでの経験の方が、カウンセラーとしての今の自分を支えてると思ってる。
まあ、子供たちの内側にあるものを聞いているうちに、毎回私の方が号泣しちゃって、先輩に後で説教されてばかりだったけどね。
…カウンセリング中に泣きだすカウンセラーは、失格、なんですって。
確かにそうなのよね。患者に心配させてたら、そこで治療が止まっちゃうでしょう?
…だから、それからは、…哀しい話を聞いて、泣きたくなった時は、家に帰ってから思いっきり泣くことにしてるの。
…これも、内緒ね。」
気付くと、笹森は目に涙を浮かべていた。
今日子先生は、穏やかな微笑みを浮かべ、じっと笹森を見守っている。
俺がそっと肩を抱き寄せると、笹森の目から落ちた滴が、俺の学ランの上を転がり落ちた。
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