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数年ぶりに乗った和真の助手席は、思ったより快適だった。
終始安全運転だったのは、後ろの席に座る、大きなお腹を抱えたマミさんの身体への気遣いと、その隣に座る母の目が光っていることを意識したためだろう。
広い道路から左折し、しばらく細い道を進んで行くと、やがてお寺の大きな瓦屋根が見えて来る。
「…なんか、久々だなあ。」
和真が呟く。
「そうねえ。…前に来たのは命日の時だから、もう半年近く経つわね。」
それを聞いて、和真と母よりもさらに前からここに来ていない事に、俺は胸の奥をつつかれたような後ろめたさを感じた。
大き目に膨らんでから左にハンドルを切り、車は砂利の弾ける音を立てながら、駐車場の奥へと進んだ。
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