第36章

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教室に戻る途中、ふと見ると、笹森の姿が俺の隣から消えていた。 振り向くと、彼女は立ち止まって、廊下の窓から外を見ている。 俺は戻って、隣に並んだ。 彼女の目線を追うと、校舎の間からちょうど、野球グラウンドの隅の屋根付きベンチが見えた。 笹森の手が、俺の右手を取った。 「…誕生日の日のこと、…覚えてる?」 彼女は遥か遠くのベンチを見つめながら言った。 「…覚えてるよ。…笹森の喘ぎ声が大きいから、ヒヤヒヤした。」 「…もう…。」 笹森が顔を赤くする。 「…そうじゃなくて…。 あの日は、…わたしが、初めて春山くんに、好きって言った日、なの…。」 あの日、…彼女の頬を濡らした涙の冷たさが蘇えり、俺の胸がちくりと痛んだ。 「もう、誰にも言わないって決めてた言葉だったから、…春山くんに言うことが出来て、すごく嬉しかった。」 「…うん…。」 彼女の手を握り返すと、笹森が俺に顔を向けた。 「…わたし、…頑張って、治したい。」 笹森は、俺の目を真っ直ぐに見つめて言った。 .
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