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一体、この雨はいつまで降り続けるのだろうかと思ってしまう程、雨は坦々と降り続けていた。 何も聞こえない…。 いや、雨の音で全て書き消されているのだろうと思う程、雨は勢いよく坦々と降り続けた。 そんな雨の中、町外れの一軒家に明かりが灯っていた。 中から不気味な笑い声が聞こえてくる。 中にはかなり年を食った白衣を着た老人と、その助手だと思われる中年ぐらいの男性と、そして何かの装置のケース内に隔離され、ベッドに横たわっていて全身黒い服を着た青年がいた。 その青年は、呼吸はしているもののまるで死んでいるのかと思う程ピクリとも動かなかった。 そして青年が入っているケースと形状も全く同じ物と繋がっていたが、そちらの方には誰もいなかった。
「もう少しだ… 後少しでワシの研究が完成する…」
老人はケースを見ながらつぶやいた。
「博士、準備が整いました」
「うむ 起動しろ」
何かの実験の準備が整ったのか老人は助手に装置の起動を命じた。 ボタンを押すと機械音と共に2つのケースが同時に光出した。
「成功だ… これでワシは…」
老人は不気味に笑った。 しかし、喜ぶのも束の間、装置から耳障りな音が鳴りだし、所々から火花を吹き出した。
「どうなっている!?」
「分かりません」
助手は懸命に装置を制御しようとしたが、触っていたボタンや画面が次々と爆発し、そして青年が入っているケースも爆発した。
「何故だ!?、ワシの理論は完璧な筈だ!!」
老人はケースが爆発した衝撃で尻餅をつき、助手も部屋の壁まで飛ばされていた。 爆炎の中、青年が入っていたケースの方から人影が現れた。 その人影は一歩、また一歩と老人達の方へ近づいて来た。 人影が近づくと同時に煙も一緒に近づいてきて、そして助手は煙に飲まれた。 人影が助手に近づき、そして…。
「た…助け…」
助けてと言おうとした瞬間、助手はその場所には居なかった。 『ドン!!』と何かが老人の身体に当たり、その場所を見てみるとべっとりと血痕が付いていた。
「あ……あ……」
老人は恐怖で声も出せなくなっていたが、何とか自我を取り戻してその場から逃げ出そうと身体を起こした。 だがそこには返り血を全身に浴び、鋭い眼光でこちらを見ている青年が目の前に立っていた。
「や…止めろ!! ワシが悪かった… だから命だけは…」
『ドーン!!』と大きな音を立て近くに雷が落ち、老人は姿を消した。 その場に立っていたのは全身を血で染め、鋭い眼光をした青年が立っていた。
青年は大声で叫び、雨は坦々と降り続けた。 まるで青年の代わりに泣く様に…。
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