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床下からお櫃が出てきたことに関しては突っ込むべきなのだろうか。さも当たり前のようにお櫃の中に入っていたお握りを手渡された。一応、お櫃はご飯を入れるものでお握りを入れるものではないのだが。 「ですから、普通に話して欲しいのです。私の希望なのです」 「俺は包丁持った女の子と普通に話せる神経持ち合わせてないんだけど」 「それは失礼したのです」 少女はあっさりと凶器を投げ捨てた。投げ捨てたという字面通り、後ろに思い切り手を振りかぶって、刃物をコンクリートの壁に向かって投擲したのである。普通なら跳ね返るか良くて刃が欠けるくらいするはずなのだが、包丁はザックリかつ深々と刺さっていた。 ここに連れて来られた時、暴れなくて良かった。心の底から。もし抵抗していたら、現在壁に埋まっているあの包丁は俺の背中で翼になっていたかもしれない。あんな翼は御免被る。 「これでよろしいのですか?」 少女は小首を傾げてこちらを見ている。無表情。無感情。無防備。 「いいんじゃね」 あとはこの手錠さえ取れれば何とでもなる。武器さえなければこちらにアドバンテージがあるのだ。 「不思議な人なのですね。包丁より銃の方がお好きなのですか」 「はい?」
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