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「押し倒されるならベッドがいいのです」
「馬鹿かお前は。誰がお前を押し倒すって?俺がお前に手出したら犯罪だっての。って、俺の考えてること分かるのか?」
「オーウェンの考えていることなら分かるのです」
「その割には細部に違いが見受けられるんだがな」
「気のせいなのです。オーウェンが私を壁に叩きつけるなんてことを考えるはずがないのです」
偉く聖人君子扱いされている上、本当に俺の考えてること分かってやがる。
「種明かししろ。本当は俺が口に出してたとかだろ?」
「違うのです。オーウェンは終始無言だったのです」
「じゃあ何で分かるんだよ?」
正直、包丁の数倍は怖い。思考は停止させようとして出来るものではない。俺の考えていることが全部筒抜けになっているとしたら、逃げることを考えた時点で鉛弾が飛んでくる可能性があるってことだ。これまで見てきたかぎり、マリアはそこまで短気ではないらしいが、油断は出来ない。
「何で分かるのかと訊かれても困るのです」
「超能力があるんですよ、とかじゃないだろうな」
「分からないのです。私も知りたいのです」
「なら一つだけ教えてくれ。俺の考えてることは全部分かるのか?」
これの答えで俺のとるべき行動が決まる。イエスだったらこの場でマリアに特攻を仕掛け、ノーだったら機を待つ。銃が火を噴くのが早いか遅いかの差だが、遅いにこしたことはない。もしかしたら奇跡が起こって仕事先の上司が助けに来てくれることがあるかもしれない。せめて通報とか。
「分からないのです」
どういう意味の分からない、だ。全部は分からないという意味なのか、そんなこと誰が知るか、という意味なのか。出来れば前者であって欲しい。
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