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ヤバい仕事に遅刻する、と思って走りながら交差点の角を曲がったら、思い切り誰かと正面衝突した。見下ろせば華奢な少女の姿。 典型的なラブコメの始まり方。最早古典的になって誰も使わないのではないだろうか。だが、今現在俺はこうして少女とぶつかったわけで。 そうは言っても、ここから先この出会いがラブコメに発展しないのは誰がどう見ても明らかである。 まず、俺はれっきとした社会人だ。故に、ここで出会った少女を助け起こして学校に遅刻し、貴方優しいのネ、なんてことはまずない。絶対にない。 次に、ある意味これが確実に発展しない理由になるのだが、彼女が口にくわえていたのは食パンでもなんでもなく、包丁だった。
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