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「オーウェンは不思議なのです」
マリアは相変わらず何を考えているか分からない顔で言った。
「でも、私はオーウェンの全部が好きなのです。そんなオーウェンだから連れてきたのです。なので、そんな険悪な顔をしないで欲しいのです」
どうやら無意識に睨んでいたらしい。眉間の皺を人差し指でグリグリと解していたら、マリアがその手を掴んできた。よく考えてみれば、彼女は未だ俺の服の袖を掴んだままだ。つまり、これで彼女は俺に密着する形になる。
「離れてくれると嬉しいんだが」
「何故そう思うのか、私は甚だ疑問なのです」
「密着するな。暑い」
「愛してると言ってくれればひとまず離れるのです」
「愛シテマスヨダカラ離レテ下サイ」
「棒読みで言われてもちっとも嬉しくないのです。もっと感情を篭めて言って欲しいのです」
「おお麗しのマイハニー、愛してるよだから離れて」
「芝居じみた口調で言われても感動しないのです。それに、最後の一言は余計なのです」
「棒読みじゃねーし感情も篭もってるだろ。何が不満だ?」
「私は貴方の愛してるが聞きたいのです」
「真顔でさらっととんでもないこと言ってるぞ、お前。あーあ、シチュエーションがまともだったらな」
「言ってくれないのですか?」
「誰が言うか。言ったら後戻り出来ない気がする。具体的に言うと、刑務所から」
「残念なのです。では、せめて私はこうしているのです」
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