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「起きろ。**」 五月蝿い。 「起きろって言ってるだろ**」 **と呼ばれるのは好きじゃない。だから黙れ。 「死んだなら死んだと一言言え、**」 確かに俺の名前は**だが。 「強行突破するぞ。文句は言うなよ」 ばしゃん、と頭から冷水をかけられて堪らず飛び起きた。どこにこんな体力があったのか、自分でも疑問だ。 「よう、**」 目の前に、笑顔のおっさんがいた。くすんだような色の赤毛が懐かしい。 「おや、おはようございます我が最強の上司様。随分とお早いご登場で」 現在俺の視界を覆い尽くしているのは、間違いなく待ちわびた上司だった。人の顔を見たのは久々だ。生命の危機が回避されたことを理解した瞬間にがくんと全身の力が抜ける。 「俺が死にそうになってた時に、あなたは何をしてたんですか」 身体の力は抜けても、口は回る。 「仕事に決まってるだろ馬鹿**」 「仕事と俺とどっちが大事なんですかあなたは」 「俺の嫁かお前は?仕事に決まってるだろ」 「薄情ですね。俺がいないとあなたの仕事も立ち行かないでしょうに」 「分かってるなら外に出ろ」 「外に出ろと言われて外に出れる身体だと思いますか」 上司は無言でペンチを取り出して手錠の鎖を切り、無言で俺を背負って歩き出した。 「あなたに背負われるなんて一生の屈辱です。早く忘れたいものですね」 「俺も男背負うなんて不愉快だ。気が合うな」
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