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少女は包丁を構えながら俺を自宅まで連れ帰ってきた。この場合の自宅というのは俺の家ではなく少女の家のことだ。注釈することでもないが。 十数分に渡る包丁とのランデブーの末に俺が連れ込まれたのは地下室だった。少女の家の地下に広がる狭い空間。壁、床、天井、全てコンクリ。防音設備が整っているかは知らないが、間取りから察するにこの地下室の上は俺の自宅だ。人の家の地下に無断で部屋を作るのは何罪になるのだろう。何にせよ、叫んだところで誰にも聞こえそうにない。 幸いなのは、空調設備が整っていることだろうか。閉じ込められている間に窒息なんて、洒落にならない。もっとも、彼女の目的が何であるか分からない今、俺の死因が窒息死になる保証はない。人を切り刻むのが趣味なのよアハハウフフと言われてしまったらそれまでだ。
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