1.新居

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外見は古臭い印象しかない2階建てアパート。 その1階の一室に、不動産屋のオッサンと俺が出向いている。 内面はというと間取り図上も全く文句はないし、日当たりも良いから洗濯物もへっちゃらだ。 それに思っていたのよりも快適そうで、白かった壁紙が若干黄ばんでいたものの、トイレと風呂場がそこそこ最近のもののようだから別に気にしない。 「どうですか、間島さん」だなんて、馴れ馴れしく俺の名字を呼ぶ。 適当に切り上げたくなって「他の賃貸はないんですか」と聞いてみる。 「しかしながら…なかなか良いでしょう、ここ?…でも入居者がいらっしゃらなくてねぇ」と言って、俺の質問を完全にスルーしやがった。 第一に、このアパートは嫌な予感がしたから言ったんだが… 不動産屋の困った表情は固まったままこっちを見ている。 えー…だって、何か嫌じゃん。 トイレと風呂が新しいのも怪しいし… 思わず「もしかして自殺だとか、殺されたりとかしたんじゃないですか?」と聞いてみた。 そうしたら、即答で「そんな物騒はありませんよ」と言われてしまう。 はて、これは本当だろうか? 不動産側の面子もあるし、ましてや現場でそんな不利益なことをいうはずがないだろうが、余程売りたいのだろう。 しかし、こちとら大学に受かりたてで、入学金を半額免除されたものの、バイトに手を付けていないから、僅かな仕送りだけが頼りの生活になる。 …だからといって、学生寮に入ることを提案するのは野暮だ。 何故なら、同世代と話をするのが苦手だから。 最初は自覚症状がなかったのだが、話をする度に噛み合わなくなり、どこと無く不安感が込み上げて息がつまるのも全て無意識だ。 それもあって、自ら進んで安い賃貸を選ぶことにした。 確かにここは色々と好条件だが、とにかく怪し過ぎる。 色々と浮かび上がった問題のせいもあり、この日は見学だけに留めた。
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