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「ねぇ!この人は!?」
私達が言い合っていると本日の合コンに参加していた他の2人の女の子が目を輝かせながら私を見た。
「知らないの!?」
それなのに七海が興奮しながら質問に答えた。
「五十嵐幸人様よ!!」
“様”って、おい。敬いすぎでしょ?
ただの大学生だっつの。
それに知ってるほうがおかし…
「「ええっ!?五十嵐君!?」」
ええっ!?知ってんの!?
突然現れた男の正体が五十嵐幸人だとわかると、さっきよりもわかりやすく騒ぎ始めた。
この事態にいっそう迷惑そうな表情を見せたのは言うまでもない。
「とにかくだ。もう紗英を巻き込むんじゃねぇぞ」
居心地が悪くなり、速くこの場から立ち去ろうと私の腕をつかみ立ち上がらせた。
「行くぞ」
返事をする前にどんどん引っ張られみんながいる席から離れていく。
『五十嵐君、またねー』という七海の声が遠くから聞こえた。
腕を引いて前を歩く男は颯爽と出口を目指して歩く。
その間に店内のいたるところから視線を感じた。
この男は何年経っても、むしろ歳を重ねるごとに、ますますいい男になっていく。
嫉妬してるのは私ばっかり…
店を出て大通りに出るとタクシーを拾った。
運転手に告げられる住所は私の家の住所ではない。
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