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「ううう、水が足りないのです……」
やはりあの水分補給ではもの足りなかったようで、まるでしおれた植物みたいに頭をだらんと垂らして虚脱感を表す。
可哀想に思ったが、ケータイは充電切れで救急車は呼べないし、そばに公衆電話があった記憶もない。水をもっとあげようにも自動販売機がないもんだから買うに買えない。
「クシュンッ!」
風が吹くと裸の少女は寒さから可愛らしいくしゃみをして元気がなさそうに俯く。
このままではいけないと思った。着ていたジャケットを少女の肩にかけながら俺は葛藤していた。
正確にはもうする事は決まっていたが、それでも葛藤はあるものだ。それは残された最後の手段。
少女を見捨てるのではなく、とりあえず俺の家に連れて行くという選択。
俺の家に着きさえすれば水もあるし、電話もある。全ての問題は解消されるが、果たして少女を家に連れて行く事が誘拐にならないか。
勿論一人の少女を救う事と自分が犯罪者に勘違いされるかのリスクを天平にかけるのだとしたら、自分がリスクを負ってでも少女を助けるべきなのは俺の良心が絶対的な肯定を示すだろう。
でも裸同然の少女を家に連れ込むのはやっぱり誘拐の気が………
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