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「寒いのですよ……ぅぅぅ」
土から露出した肌に幾度となく風が打ちつけられ、ガチガチと歯を鳴らしてジャケットを握り締める。
「誘拐、救出、誘拐、救出、誘拐、救出、誘拐、救出……え~い、迷ってる場合じゃねえ!」
椿と歳がいくつも違わないような少女が裸で土に埋まり震えているのだ。俺は誘拐犯に間違われでもこの少女を救う。
「今引き上げるからじっとしてろよ」
なるべくジャケットの隙間から露出した肌を見ないようにして少女を抱き締める。腰ほどまでは掘り起こしたのだ、多少は痛いかもしれないが、引っ張れば救出できる。
「暖かいなのです」
恥じらいという概念はないようで、俺に抱きつかれて土から救出されるまでの間、少女はそう漏らしながら抵抗を一切しなかった。
少女を土から引き上げる。自分の目を覆った。案の定……下も裸だった。
「煩悩退散、煩悩退散、煩悩退散、少女の体になんか興奮しない!」
そう念じながらやましい心を振り払う。そうだ、妹の、椿の裸だと思えばいい。妹に欲情するか?答えはNOだ!お父さんのような気持ちになるんだ俺!
「今から俺の家に連れて行くよ?いいね。それから救急車なりなんなり呼ぶから」
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