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とりあえず水をあげようとリビングに向かおとする途中、洗面所の前で力なく言葉の通り萎れていた女子が俺の背中でむくりと動く。
「水……水の気配がするのですよ……」
洗面所の方を向いて仕切りに手を伸ばす。そりゃあ洗面所なんだから水道もあるし、隣にはトイレと浴室もある。
水の気配がするのは当たり前なんだが、少女の言う水の気配は視覚的ものとは別の感覚のように思えてならなかった。
「水っ水なのですぅぅぅ!」
遂にはかっと目を開き、ジタバタと暴れると俺の背中からストンと廊下に落ちる。そして走ってトイレのドアの前に立つ。
「水!ここに水があるのですよ!」
ドアをトントン叩いて水ですよアピール(いったいどんなアピールだよ)を繰り返す。
「トイレに行きたいのか?分かった。今開けるから」
裸の少女をトイレの前で待たせるのはなんだか自分が特殊ないけない事をしているような気分になり、すぐさまドアを開けた。
競馬場の馬のようなスタートだった。俺が扉を開けた瞬間、少女は便器の中の水に顔を突っ込もうと身を乗り出す。
「ストッーーープ!」
何か危ない予感がしてとっさに少女の体を抑える。
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