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早急に少女を病院に搬送する必要がある。もしかしたら、もしかしなくても少女の帰りを心配している親がいる事だろう。
トイレの水にありつけないことを悟った少女はまたぐったりとしおれ、フローリングの上で車に潰された道路の雑草のように伸びていたが、一本だけ立っていたアホ毛が神経でも通っているかのようにピクリと動く。
緑色のアホ毛はピクピクと揺れ始め、ついには触角のように風呂場の方向を差し始める。
「水の気配がするのですか?」
少女は自分のアホ毛に話しかけ、アホ毛はそれに答えるように必死に風呂場を差し続ける。
「水があるのですか?」
ピクピク。
「確かに感じるのです」
ピクピク。
「水にありつけそうなのです!」
ピクピク。
……。
「自分のアホ毛と喋ってるんじゃねえええ!」
その動作が余りにも自然過ぎたせいで俺の脳が思考を放棄しそうになった。
理性で彼女を病院に連れて行かなければいけないと抑制がかかっているが、それを押しのけて本能がこの子を病院に連れて行ってはいけないと訴えかけてくる。
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