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声を張り上げはしたものの、このまま放置しているとまた自分のアホ毛と以心伝心の会話を始めそうなので風呂場に繋がる扉を開ける。
少女はトテトテと歩いていき、空っぽの浴槽を覗き込むとアホ毛をハテナマークにして首を傾げる。
それが異様な光景である事は間違いないのだけれど、アホ毛と喋るくらいなのだからアホ毛が変幻自在に動く事ぐらいでは流石に動揺しなくなっている自分がいた。
「水の気配はするのに、どこにも水がないのですよ」
不思議そうに浴槽の縁に体を押し付けてその中を覗き込む。あまりに前のめりなので頭から浴槽の底に突撃する前に体をそっと支える。
「まだお湯を張ってないからな」
「あったかい水の事なのですよね?」
「う、うん……お湯な。お湯」
その変な口調とイマイチピンと来ない話方に若干の話しづらさを感じる。
しかしこれは良い機会かもしれない。少女の体はこびり付いた土でベッタリ汚れているし、少し粗忽ではあるが、シャワーの水なら飲めない事もない。
さっきみたいにペットボトルを渡してその大半をこぼされてしまうよりは幾分か効率も良いだろう。とするとこのまま一度風呂に入れてやった方がいい。
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