プロローグ

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親の話で妹は中休み、階段から落ちて頭を強く打ちつけたと聞かされた。驚く程単純で驚く程簡単な説明だった。 頭を打ち血を流した椿はすぐさま救急車で病院へ運ばれた。手術はなかったが、医者は椿の脳にダメージがないかなどを調べていたらしい。 そして昼過ぎ、全ての検索が済み、包帯を巻かれた椿がベッドの上に運ばれた頃、俺に連絡が入った。 生きている事にほっとして、椿を眺めた。死んだように眠ってはいるが、胸がしっかりと上下している。 椿を見てくれた医者の先生が俺達家族に椿の様態を説明してくれた。 椿は頭を強く打ち、それが脳にダメージを与えいると。目を覚まさないかもしれないし、目を覚ましても障害が残る可能性がある。そして、一生目を覚まさない可能性もあると最後に通告された。 その日から俺達は毎日妹を看病した。母は会社を休み朝から病院へ行った。父と俺はそれぞれ学校と会社が終わり次第椿に会いに行った。 長い苦痛の始まりだった。半年経った頃母は仕事を辞めた。家族の誰一人として毎日見舞いに行く事を止めなかった。 一年が経った頃、父がポロリと漏らした。 「生きているだけで幸せだ」 と。
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