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少しだけ希望の光が見えてきた気がした。さっきまでの疲れなんて忘れて一心不乱に土を掘り返す。
それは突然だった。突然過ぎて心臓が止まるかと思った。硬直した体を予備動作もなしに動かし、俺の腕をむんずと掴んだ。
視線を茶色の土から少女に戻すとピンク色の綺麗な瞳が俺を見つめていた。
少女は生きている。そして俺の事をぼうっと眺めている。土に埋まったまま……
「……み……す……」
少女の口がゆっくりと動き、小さなかすれの声で何かを呟く。
「なんだ!なんて言ったんだ!?」
少女の口元に耳を寄せ、その言葉をなんとか聞き取ろうと耳を澄ます。
「水……」
消え入りそうな声だったがさっきよりははっきりと言葉の意味が分かる。
「水、水だな!たしかリュックにミネラルウォーターが」
「水を下さいなのですよ」
耳を疑った。てっきり喉が渇いてかすれて声が出ないのかと思っていたからだ。少女は何の苦もなく言葉を発している。
「水を下さいなのですよ」
「喋れんのかい!!」
わざわざ口元に耳を近付けた自分がアホみたいに思えてくる。
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