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まだ引き返せる。
ああ、アレは夏のことだったと思う。
期末テストとか大っ嫌いな水泳の授業に頭を悩ませていたから、間違いない。
アレは、なんのヘンテツもないいつもの帰り道の途中に、起きた。
ヘンテツってのは変な鉄のことじゃなくて、変態の変に哲の哲で変哲だ。
つまりは、いつも通りの日常。
学校でだるい授業を受け、放課後に友達とどうでもよすぎて涙が出るような話で盛り上がる。
そして、駐輪場にとめてある自転車に乗って帰る。
家は高校からそんなに遠くない。
横断歩道を四つほど渡るだけでマイスイートホームへ到着、
――するはずだった。
わたるだけ
わたるだけ
わたるだけ
わたるだけ
わたるだけで
よかった。
でも、
気づいてしまったんだよ。
それが問題だ。
俺は、二つ目の横断歩道を渡り切る前に気づいてしまった。
この世界の、歪みに。
気づかなければ、まだ引き返せたのに。
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