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バラバラバラ………
ヘリのすさまじい羽音で
何も聞こえなくなり、
体が地を離れ、
担架を運ぶ隊員の
荒い息づかいがすぐそばで
聞こえる。
『…重傷者一名、
ヘリに収容しました。
これから緊急搬送にて…』
割れたような声が聞こえて、
もやのかかったような意識を
取り戻した。
「…す…いません…もう…もう一人は…」
必死でまぶたを開け、
すぐ脇にいた救急隊員に
声を押し出す。
「大丈夫ですよ。
もう一人の方はあなたより緊急を用していませんので、次のヘリで運びます」
点滴の管が乱雑に揺れ、
隊員の瞳が複雑に揺れた。
「…そんな…はずはない…彼は足を…」
血にまみれた村上の足。
変な方向に折れ曲がっていた。
「…確かにもう一人の方も重症です。複雑骨折に打撲が数ヶ所。ですが早くに止血処置をされていたみたいで」
ヘリの振動に耐えながら、
隊員が優しく微笑んだ。
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