傷ついた天使

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ドアを開けると、 嗅いだ記憶のあるソースの匂いが 立ち込める。 「いらっしゃい!」 跳ね上がるあの声も 同じ。 パスタ屋の前とは 違う席に座ると、 病院の空気からようやく解放される。 「…あの時は、 先輩のお友達と会ったね」 桜木奈々と会ったのも、あれが初めてだった。 「そうやったな。 そういえば、あいつら うるさかったな」 思い出すように 先輩が笑って、 あの日に戻れたら… と、また胸がズキンとする。 「…――ね、 私がもし堕ろしたら… 先輩は留学してくれる?」 そう言うと、 先輩は水を飲む手を止めて、 じっと私を見た。 「…――沙羅がそうしたいんか?」
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