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珍しく眠り込んでしまっていたらしいクラトスは、目を覚ました。
天使になって眠ったのは、初めてなのではないだろうか。
これは何かの予兆なのか。
それに何か、長い夢を見ていた気がする。
幸せだったように思うが、よく思い出せない。
むしろ、最早何が夢なのかさえ、よく分からない。
クラトスは顔を上げ、目の前に広がる森の、その向こうを見ようと目を細める。
これから、息子であるロイドと戦わなければならない。
もうじき仲間を連れて来ることだろう。
…覚悟はしている。
「アンナ…もうすぐだ。
もうすぐ、お前に会える…」
残酷なほどに青い空を仰ぎ、クラトスは呟いた。
そしてまた目を閉じ、息子を待つ。
この戦いで息子に負ければ、自分は死ぬことになるだろう。
いや、きっと負ける。
今の彼は、自分が本気で戦っても勝てないであろう程に強くなった。
ようやく死に場所を得られるのか、と、彼は思う。
ただ、手を離してしまったあの日から、今まで…そしてこれからも。
息子が育っていく姿を、近くで見つめて、見守っていきたかったと…たったひとつの後悔を残しながら。
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