3.銘々の思惑

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「三つ目は……学園の理事長さんに、ちょっと用があってね」 急に変化した語調に、木宮はほんの数ミリ首を傾げる。 優の黒い目には、温かい光が宿っていた。それまで仮面のようだった笑顔も、今は心の底を露にするかのようにまっすぐだ。 どことなく、鋼介のそれに似ている。 木宮が理想とする笑顔に、似ている。 「……まあ、しばらくはこっちに滞在するから、頭の片隅には置いといて」 にこやかな一言。呆けていた少年は、返事を返すまで間を必要とした。 「ああ……」 「それじゃあ、今度は僕から聞かせてちょうだい」 身を乗り出して優が切り出す。微笑みの中には、ニヤニヤと感じの悪い色も混ざり始めた。 再びの態度の豹変に少し面食らいながらも、木宮はぎこちなく頷く。 果たして、優は興味津々といった風に尋ねた。 「もうじきクリスマスだけど、蓮は予定とかあるのかい?」 すごく、楽しそうだ。 彼がどういう種の答えを期待しているのか、万人に察することのできる様子だが、 「……」 木宮は言葉に詰まった。表情は変えないまま、静寂だけを積み重ねていく。
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