3.銘々の思惑

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(とりあえず、気配で『話しかけるな』と訴えてはいるが……) それは、不特定多数の女子だけでなく、桜田に対しても壁を作っていることを意味している。 「一緒に居たいとは思うが、どうすればいいんだ……?」 光明のない状況に憂いを抱く木宮は、言い終わった後に顔を上げ、怪訝な顔になった。 「ッ……」 優は体を折り曲げ、テーブルに突っ伏していた。 一瞬どこか悪いのかと案じたが、彼は小刻みに身を震わせている。見えるのは頭頂部だけで、表情は窺えない。 そろそろ何か声をかけようか、というタイミングで、 「あ~、まったく甘酸っぱい!」 ため息混じりに吠え、優は体を起こす。 その笑みは、どこか恍惚としていた。 「どうしてそんなに甘酸っぱいんだ! 何故そこまで初々しいんだ! 甘いカクテルでも飲みたくなってきちゃったよ、どうしてくれる!?」 「声が大きい」 店中の視線を集める父を、短い言葉で一刀両断した木宮は、とうとう小さく息を吐いた。 彼は、笑っていたのだ。 何をそこまで笑うのか、いまいち理解できなかったが、なんとなく嫌な気持ちになったので、無言のまま茶をすする。
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