4.語らう日

4/33
前へ
/424ページ
次へ
とにかく、オレが苦悩しているのはそういう現状である。 勘違いしないでいただきたいのだが、オレは別に嫌がってはいない。嬉しいし喜ばしいし、光栄だと思っている。 葛西のことはもちろん好きだ。芯が強く思いやりがあり、いつも柔和に接してくれる彼女の、どこを嫌いになれと言うのか。 ユーリも……まあ、好きである。間を置く程度の惑いはあれど、時たま見せられる女の子らしい側面には、いつも惹かれる。 こんな美少女たちに好感を持たれてげんなりするほど、オレはノーマルな感性を捨て去った覚えはない。 しかし、 (だから困ってんだよな……) どちらも大切だからといって、双方と付き合うなんて論外だ。それは俗に二股という。 必然的にどちらかを選ばなければならないのだが……難しすぎる。期末試験の方がずっと簡単だった。 一方を選ぶということは、他方を選ばず、傷つけるということ。 何て残酷な二択問題だろう。 「……はぁ」 考えることに疲れ、ため息。ここ数日で急増した動作だ。 とりあえず目先の予定──イブに葛西と行く映画祭に集中しているが、ふとした瞬間に思い出すと、たちまち滅入ってしまう。
/424ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68679人が本棚に入れています
本棚に追加