4.語らう日

5/33
前へ
/424ページ
次へ
唸って頭を抱えていると、 「前々から知ってたし、正しいとは思うけどよ……」 慎士が感心半分、呆れ半分といった苦笑を浮かべて感慨深く言った。 「お前って真面目だな」 「悪ぃかよ」 「全然。正しいっつったろ?」 開き直りにもさらりと返し、水を一息であおる。 プハァッと親父臭く息をつき、こちらをまっすぐ見据えてくる両目は、炎を固めたような赤色だ。 「何も考えねぇでプラプラほっつき歩いてるヤツより、お前みたいにうんうん悩むくらい真剣なヤツの方が、ずっと良いだろうよ」 「……ああ」 「で、オレから一つ」 赤眼の真摯な色が強まる。 「ユーリがどうかは知らねぇけど……少なくとも晴海ちゃんは、お前にフラれるかもって怖がってると思う」 「……」 「あ~、別に晴海ちゃんにしとけって言ってるわけじゃねぇぜ? ただ、そうやって不安でも頑張ってる子が居るんだから、お前も最後まで真剣でいてくれよ? って話」 「分かってるよ」 それは重々承知している。 逃げずに向き合おうと努める人に、オレから背を向けていいはずがない。答えは必ず出すさ。 それがどんなものであろうとも。
/424ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68679人が本棚に入れています
本棚に追加