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唸って頭を抱えていると、
「前々から知ってたし、正しいとは思うけどよ……」
慎士が感心半分、呆れ半分といった苦笑を浮かべて感慨深く言った。
「お前って真面目だな」
「悪ぃかよ」
「全然。正しいっつったろ?」
開き直りにもさらりと返し、水を一息であおる。
プハァッと親父臭く息をつき、こちらをまっすぐ見据えてくる両目は、炎を固めたような赤色だ。
「何も考えねぇでプラプラほっつき歩いてるヤツより、お前みたいにうんうん悩むくらい真剣なヤツの方が、ずっと良いだろうよ」
「……ああ」
「で、オレから一つ」
赤眼の真摯な色が強まる。
「ユーリがどうかは知らねぇけど……少なくとも晴海ちゃんは、お前にフラれるかもって怖がってると思う」
「……」
「あ~、別に晴海ちゃんにしとけって言ってるわけじゃねぇぜ?
ただ、そうやって不安でも頑張ってる子が居るんだから、お前も最後まで真剣でいてくれよ? って話」
「分かってるよ」
それは重々承知している。
逃げずに向き合おうと努める人に、オレから背を向けていいはずがない。答えは必ず出すさ。
それがどんなものであろうとも。
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