4.語らう日

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て、親友が帰宅部である理由はどうでもいい。 今は昼飯を胃に納めることだけに集中しよう。時間は限られているのだ。 決意を固めて、少し伸び始めた麺を箸で掴む。 「神崎君。隣いい?」 が、すぐに背後から話しかけられた。 声のした方を見やると、右目を白い包帯で覆った童顔が、親父譲りの碧眼に映る。 二重人格者・皇 奈緒だ。 「いいぞ」 「ありがと」 「芦屋が居ないなんて珍しいな」 「ちょっと風邪こじらせちゃったみたい。でもアシャは強い子だから、風邪なんてすぐに治しちゃうよ」 慎士の一言に、どこか明るさに欠けた笑顔で応じる。いつもの皇らしくない。 「何かあったのか?」 つい聞いてしまうと、同い年とは思えない同級生は、定食をつつく手を止めた。 余談だが、ウチの食堂の定食はけっこうボリュームがある。皇は小さな体に似合わず、よく食べる方らしい。 「最近のアシャは……僕とマオのこと避けてるみたい」 「何で?」 「こないだの教団騒ぎの時か」 オレの疑問に続いたのは、合点がいったというような顔の慎士だ。 「オレに加勢する時、裏スメが何かキツいこと言って、芦屋の制止振り切ったんだろ」 ずいぶん安直なニックネームだな、おい。
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