4.語らう日

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暗い雰囲気が嫌になったらしく、慎士は努めて明るい声を出した。 「そう沈むなよ! もうすぐでクリスマスなんだしさ!」 ここまでクリスマスやイブのことを話題にする無神論者って、どうなんだろう? 「クリスマスかぁ……イブは貴族会に出なきゃいけないから、そんなに楽しみってわけでもないんだよねぇ」 ちょっと舌足らずな口調で、なかなかセレブなことを言いやがる。 「貴族会?」 「西洋式は、毎年クリスマスとお正月にあるの。『白』も『黒』も関係ないから、ユーリさんや宍戸君も来るんじゃないかな?」 今年はユーリさんは来ないと思うけどね、と続ける皇は、 「けっ」 オレの隣で、慎士が眉間に皺を寄せていることに気づいていない。いくら犬猿の仲だからって、ただの人名に反応しすぎだろ。 今に始まったことじゃないし、いちいち指摘しないけどな。 「じゃあ、その貴族会でそれとなく聞いてみたらどうだ? もちろん、周りに人が居ない時に」 黙ってしまった慎士に代わって提案してみる。我ながら思いつきも甚だしい。 皇もそう感じたのかどうかは知らんが、表情を明るくはしなかった。
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