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「……」
もうちょっと深く考えてみろよ、皇。
言おうとした忠告は、声にする寸前で飲み込み、呼気として肺に戻した。
こいつは、友達と認めた人間を疑わない。信じて信じて信じ抜いて一緒にあろうとする。
そういう性質を知ってか知らずか、皇に友達呼ばわりされたヤツは、誰一人として彼を裏切らない。
皇の交友範囲は狭いが、ただ多いだけの連中と比べたら、とても幸せなヤツと言えるだろう。少なくともオレはそう感じた。
だから、マオや芦屋を純粋に信用する皇に、忠告なんてできない。
それは失礼というものだ。
(うだうだとお節介すぎかね)
内心で肩をすくめるが、仕方ないと自分自身に反論する。
皇には、とかく純朴なままでいてほしい。オレの勝手な意見かもしれないが、そう思う。
「鋼介?」
慎士に訝しげに呼びかけられ、思考から覚めた。
「どした?」
「悪ぃ、ぼ~っとしてた。何?」
「や、何ってお前……」
「お前は何を言ってるんだ」みたいな感じで、我が親友はオレの手元を指す。
「うどんめっちゃ伸びてるぞ?」
「……」
今度から大盛りにするのはやめるとしよう。
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