4.語らう日

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──── 玄関の引き戸の隙間から風が侵入し、物悲しい調べを奏でる。 夕日が山の向こうに失せ、空を夜に明け渡しつつある今、生徒用玄関は薄暗い。ちょっとで良いから明かりが欲しいな。 などと考えながら外靴に履き替え、部活に勤しむ連中を横目に正門を目指す。 今日は帰ったら、イブの計画を確認する予定だ。 葛西が映画祭というイベントを提案してくれたのは、正直助かった。男女で出かける先なんて、オレはろくに知らないからね。 そうこう考える内に広大なグラウンドを抜けたオレは、 「ん?」 正門前に見覚えのある後ろ姿を見つけ、歩調を微妙に緩めた。 学校指定のブレザーの上に、どこぞの高級オーバーを羽織るそいつは、微風に白髪をなびかせて立ち尽くしている。 どうしようかと思ったが、声はかけることにした。 「宍戸」 振り向き様に照射されるのは、灰とも黒ともつかない、不思議な色合いの視線。 「何してんだ?」 「何をしていようと僕の自由だろう」 いつも通りの、人を小馬鹿にするようなセリフだが……裏には小さな苛立ちが含まれていた。珍しい。
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