4.語らう日

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宍戸は人を見下した発言を平気でするが、八つ当たりや弱い者いじめは(オレに負けてからは)基本的にしない。 しかし、分かりにくいとはいえ、今のこいつは苛立ちを露にしている。 八つ当たりとまでは行かないが、こうして他人に感情を漏らすなんて、宍戸にしては珍しいのだ。 彼もそのことに気づいたのか、 「……迎えの車を待っているんだ。例の同時多発デモ以降、父上は神経過敏になっていてね」 取り繕うように言葉を繋いだ。結局オレの質問に答えた形になる。 仮面がボロボロと崩れるようで、ちょっと面白い。もう少しからかってやろうかな。 「何そんな慌ててんだよ。らしくねぇぞ?」 「……君ごときが僕をからかおうなど、良い度胸だね」 刀のような眼光が顔面に刺さる。そういえば、こいつの武器は日本刀だったっけ。 慣れない真似するんじゃなかったと冷や汗を流すが、宍戸はそれ以上口を出そうとはしなかった。 代わりに小さくため息をつき、視線を前に戻す。 高台に位置する学園正門からは、桜峰の町並みが一望できる。光が灯っているのは、オフィス街や繁華街方面が中心だ。
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