4.語らう日

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どれほどそうしていただろうか。 「君たちは気楽で良いな」 耳を疑いたくなる一言が、確かに鼓膜を震わせた。 口調こそいつもと変わらないが、宍戸が他人を羨むニュアンスの発言をするなんて……珍事を通り越してる。もはや変事だ。 チワワが華麗なダンクシュートを決める様を見せつけられたような気分でいると、彼はさらにセリフを続けた。 「好きな相手と好きに話して、好きに出かけて……将来の選択は自由。本当に気楽で良いよ」 ひどく、疲れた声だった。 「……本当にらしくねぇぞ。どうした?」 「……」 オレの問いかけには、無言が返ってくる。 横顔に変化は見られない。サッカー部の喧騒を背に、常の不遜な目つきで街を見下ろしている。 無表情とは少し違う──どんな気持ちにもとれるが故に、本心を読みにくい表情だ。 かける言葉はないが、今さら退く気もない。そんな気構えで待つ。 「今度のイブにある貴族会」 迷うような間の後、再開。 「許嫁と会うことになった」 「……ふぅん」 貴族会ってのは、昼に皇が話していた会合のことだろう。
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