4.語らう日

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そこに焦点を合わせようとする前に、桜田が勢いよく振り向く。 「あのさ……!」 思い詰めた表情に。切羽詰まった声に。それまで超高速で回転していた思考を、根こそぎ持っていかれる。 そのままでは他の利用者に迷惑なので、音もなくエレベーターを降りた。 「何だ?」 「えっとね、えっと……」 しどろもどろに呟きながら、目を合わせないよう必死になっている。 木宮は彼女の言葉を待つ裏で、同様にセリフを練っていた。意識はポケットの中に向く。 肌身離さず持っている"それ"に。 三十秒待っても話が始まらないため、木宮から切り出す。 「桜田」 「ぬぁ、な、何!?」 「先に一つ、良いか?」 短髪の少女は激しく狼狽しつつも、これ幸いとばかりに頷いた。 応じて取り出された二枚の紙片。ポケットに入っていたのに皺一つないのは、永遠の謎である。 差し出して、努めて普段の雨垂れのような声を発する。 「もし良ければ、行かないか?」 "一緒に"という部分が抜けてしまったが、そこは察してもらえるよう懸命に祈った。 そして桜田は鋭いので、最初はきょとんと発言の意味を考えていたが、すぐに太陽のような笑顔になる。
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