6.聖夜にて 後

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「たった一人で、たくさんの人の力になれる……強くて優しい人になりたいって」 「……それは」 「分かってる。そんなの無理だよね」 あっさり否定する葛西は、薄く自嘲気味に笑う。 「私は神様じゃないから……一人きりで何でもできるほど、強くなんかない」 オレたちは、強くない。 誰もが知ってて、しかし受け入れたがらない、絶対の真理。 「でもね……たった一人を、死ぬ気で支えることなら、私にもできると思うの」 ここで、葛西は顔を上げ、アメジストのような目でオレを見上げる。 そこに宿る意思は、次の瞬間、 「私は……神崎君を支えたい」 確固たる言葉と化して、オレの脳を直撃した。 まるで思考回路が災害に見舞われたようだ。考えるという作業を行えない。 「誰よりも神崎君の力になりたい。誰よりも神崎君のそばに居たい。誰よりも、神崎君の一番でありたい」 どういう意味の"一番"か。分かってるはずなのに、脳がその意味を把握してくれない。 「……神崎君」 「は、はい」 混乱のあまり、半ば裏返った敬語になるが、葛西は指摘しなかった。 深呼吸を一回挟み、 (ああ、来る) 意を決したように、 (来ちまう) 唇を開く。
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