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「私は……神崎 鋼介君のことが、好きです」
ふわりと、粉雪の舞いが強まる。
イルミネーションに照らされて、冷たい礫は自身の白を反射し、極小の宝石のように輝く。
鋭くも優しい純白の光に抱かれて、オレは身の動きを止めた。
いや、身の動きだけじゃない。心臓や肺も止まったみたいに、呼吸が苦しくなる。
体表がじわっと熱くなり、首から上が沸騰して煙を上げる。周囲の気温に冷やされても収まらない。
(……)
もう、言葉さえ浮かばない。
言語にもならない、ただの音声だけでもいいから発したいのだが、そんな簡単な作業さえ、今のオレには不可能だった。
歓喜、困惑、狂喜、動揺。どんな感情にもなれない今のオレを表現するなら、たぶん『無』だろう。
既に危険域に突入していた、オレの脳内メーターの針は、
「私と、付き合ってください」
ダメ押しのような葛西の一言により、完全に振り切れた。
背景にはクリスマスツリー。空からは雪。どこまでもベタで、それ故に理想的とさえ言えるシチュエーション。
そんな中での告白なんて、もう反則だ。
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