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激しさを増すばかりの『無』の嵐は、
「……」
葛西の表情がどんなものか、働き始めた脳が理解することで、勢力を弱めた。
恥ずかしさで赤くなりながらも、揺るがぬ決意に目を光らせる彼女は、オレをまっすぐ見上げている。
わずかな恐怖に、表情を少しだけ固くしていても、その強い眼差しだけは逸らさない。
「……」
数日前、慎士が言ってたことを思い出す。
『そうやって不安でも頑張ってる子が居るんだから、お前も最後まで真剣でいてくれよ?』
目を閉じ、そっと深呼吸。続いて、心の中で自身を叱咤した。
(……落ち着け、オレ)
葛西は今、戦ってる。オレが考えることを放棄してどうする。
平静を取り戻した頭で、思考活動を始めた。あらゆるものが交錯する心の中から、答えを探る。
……不思議だ。考えれば考えるほど、秋の空のように澄んでいく。
心が、一つになっていく。
「……」
開眼しても、葛西の様子に変化はない。相変わらず真摯にこちらを見つめている。
どれほど時間が経ったかは分からないが、視線は頑なに外さない。
その決意に、応じるように。
オレは口を開き、喉で震えを取り除いた声を、返事として返す。
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