6.聖夜にて 後

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細く小さく畳まれた紙を開く。書かれている文字は、幾重にも刻まれた皺のせいで、かなり読みづらい。 しかし、筆跡は間違いなくゾリスのものだ。 『我が最愛の妹へ』 「~~~!」 一行目で、さっそく悶えて机に突っ伏してしまった。 しばらく手足をバタつかせた後、心を鎮めて先を読んでいく。 『メリークリスマス、ユーリ。 口で上手く言えるか分からなかったから、手紙にしてみた。読みにくい字で済まない』 確かに読みにくいが、それは単純に、紙が折れすぎているからだ。 『考えてみると、お前にプレゼントを渡すのは、これが初めてだな。 十六歳の女の子にぬいぐるみもどうかと思ったが、お前が喜んでくれそうなものを考えたら、これしか浮かばなかった。 残念なセンスで申し訳ないが、気に入ってもらえると嬉しい』 「そんなことないよ」 他に誰もいない自室で、独り言をこぼす。 実はユーリは、贈り物としての高価なアクセサリーが、あまり好きではない。 ハディス家の財産目当てでユーリに近づく貴族たちが、決まって高い物品で気を引こうとしたのが、その原因である。 故に、プレゼントがテディベアであったことには、とても喜んだのだ。
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