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『入院している間、お前は毎日お見舞いに来てくれたね。とても嬉しかったよ。
本当は、一日でも多く家に帰り、お前や使用人たちと色々なことを話したいから。
ただ、正直に言うと、私には気がかりなこともあった』
「?」
急に話の流れが変わった。
『私は早くに当主になり、様々なことを体験してきた。失うものもあったが、それ以上に多くのものを得られたと思っている。
しかし、どんなに願っても絶対に手に入らないものがあることにも、私は気づいてしまった』
わずかな絶望さえ垣間見える文面に、ユーリの目は釘付けになる。
急いで二枚目へ移ると、短い一文が水晶体を突き抜け、網膜に飛び込んできた。
『心を許せる友達だ』
「……」
何かが、心に刺さるような感覚を抱きつつ、続きを読む。
『私には世界中にたくさんの友人がいる。しかし、彼ら彼女らに心を許しているかと問われると、返答に困るのも事実だ。
疲れている時など、みんなは私がハディス家の当主だから関わりを持っているだけなのではないかと、失礼なことまで考えてしまう』
初めて触れたゾリスの暗い一面に、わずかに驚いてしまう。
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