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「……」
皺だらけの手紙を机に置き、静かに目を伏せる。
『友達』。
その一単語が脳裏に蘇らせたのは、いつの間にか多くの時間を過ごすようになった男女。合わせて五人。
しかし、直後に頭を埋めたのは、否定の文句。
(そんなわけ……木宮は何考えてるか分かんないし……)
どんな時も揺るがない冷静さと鋭い分析力は、大したものだと思うが。
(笹原は、うっさいし……)
さりげなく周囲を気遣える気配りは、成績の悪さを感じさせないほど緻密だが。
(桜田は、お節介だし……)
人付き合いが苦手な自分に、積極的に近寄ってくれるのは有り難いが。
(葛西は、何か嫌いだし……)
自分にない素直さと優しさは、羨ましいと思えるが。
(鋼介は、バカで間抜けでお人好しで、優柔不断だし……)
色々と──そう、色々と。感謝してはいるが。
「……はぁ」
言い訳がましい思考を、ため息に乗せて追い出す。
認めたはずだ。それでも彼らは友達だと。
嫌いなところがあっても、苦手な部分が見えても。それらを乗り越えて一緒に居たいと思える、大切な友達だと。
「……」
いつの頃からか、自分は一人じゃなくなっていた。
友達と、一緒だった。
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